ソヴァージュ  マダムになるまで⑥

念願の、本格的に料理を学べる環境に行ける事になりそこでは3年半ほど働かせてもらいました。

今まではお菓子屋さんに行きたい思いだったけれど、料理1つに絞りスペイン語も勉強し始めました。

とにかく全てを吸収したい一心で、恋や遊びは2の次でした。と言うか忘れてました。

帰ってもテレビは観ずに(というか持っていなかったw)スペイン語のラジオやスペイン語圏のレンタルビデオを借りて過ごしていました。

オーナーシェフと私だけの環境で、今思うと最高に恵まれた機会でした。

当時、浮かれすぎて夢を見ていた私は料理人/社会人としての心構えが出来ていないと、シェフに強く指導されました。とても大変でしたが、とても可愛がってももらえました。

お客様との距離も近く、常連さまからは『愛のムチだね、頑張って!』『いつも頑張ってシェフについて凄いね!』

なんて温かい応援もしてもらいましたが、当時は仕事一本で気が狂うほどで途中から、体調も悪くなってしまいました笑。一途な情熱がいつからかこんがらがっていました。

死ぬ気で必死でやればいつか道は開ける。

シェフに罵倒されボロクソに言われる毎日だけど、絶対に耐えて見せる。

そんな自分自身とシェフのマインドコントロールに私は苦しくなっていました。

天国と地獄の3年半。

今となっては貴重な修業時代ですね。

 

辞める時にシェフに、

『お前に教えられる事は全て教えたからな』

だけ言われました。

体調も限界に来ていた時期だったので、お世話になった感謝の気持ちと早くこのシェフから離れたい気持ちと両方入り混じって、そして自分でも自分が何者なのか分からなくなっていました。

だけど、この次に働く場所でシェフの言ったその言葉を私は理解し、少し感謝する様になります。

「地獄だったけどあれがあるから今があるんだ・・・」

なんたって、料理の技術や知識はほとんど教わりませんでしたから。

(基本の仕込み、掃除、接客、まかない、発注、納品、仕入れ、バイトさんの指導、シェフのアシストなどが主。)

 

『自分で勉強するスタンス』と『時期が来たら教えて任せる』という具合だったのです。

つまり私はそのレベルに達しずに辞めてしまったのですが、

次のお店では料理の楽しさや自由さ、面白さを体験していく事になります。